内部統制は「文書整備」だけでは防げない|上場企業の内部統制不備から考える実務上の課題
2025年度上場企業の内部統制不備から考える実務上の課題
東京商工リサーチより、2025年度の上場企業における「内部統制の不備」に関する調査結果が公表されています。
同調査によると、2025年度に内部統制の不備を開示した上場企業は 41社でした。
決算・財務報告プロセスの不備が最多
内容別では、会計処理の誤りなどの 「決算・財務報告プロセスの不備」 が21件で最多となり、全体の50.0%を占めています。
また、開示した41社のうち15社が、関連部門の人材不足または担当者の知識不足を原因として挙げている点も注目されます。
内部統制は、文書を作成しただけでは機能しない
内部統制というと、規程、業務フロー、RCM、評価調書などの文書整備に目が向きがちです。
もちろん、これらの文書は重要です。
しかし、内部統制は、文書を作成しただけで機能するものではありません。
実際には、営業、経理などの各現場で、統制が継続的に運用される必要があります。
また、不備や異常の兆候を早期に把握し、改善につなげる体制も重要です。
人材不足・知識不足は、内部統制上の大きなリスク
今回の調査では、人材不足や担当者の知識不足を原因として挙げる企業も目立っています。
この点は、内部統制の課題が、単にチェックリストや評価調書を整備すれば解決するものではないことを示しています。
たとえば、次のような状態では、形式上は統制が存在していても、実効性は十分とはいえません。
・統制手続は定められているが、担当者が目的を理解していない
・評価調書は作成されているが、実態とのずれが把握されていない
・監査法人からの指摘を受けて初めて課題が顕在化する
・IT統制の論点が、社内間で十分に連携されていない
・内部監査が形式的な確認にとどまり、改善につながっていない
また私が過去に関与した案件で、内部統制の担当者が実質的に1名に限られており、その担当者に業務知識や対応状況が集中していたケースがありました。
その後、当該担当者が体調不良により急遽退職することとなり、内部統制の運用状況や評価対応に大きな影響が生じかねない状況となりました。
内部統制が特定の担当者に過度に依存している場合、その担当者が不在になった途端に、統制の運用実態や証跡の所在、評価上の論点が把握できなくなるリスクがあります。
このケースでも、対応が遅れていれば、内部統制における開示すべき重要な不備として検討せざるを得ない状況に発展する可能性がありました。
しかし、業務プロセスの整理、統制内容の再確認、証跡の確認、監査法人との論点整理を支援することで、最終的には大きな問題に発展することなく対応することができました。
この経験からも、内部統制は担当者個人の知識や努力に依存するのではなく、業務プロセス、証跡管理、評価対応、監査法人対応までを含めて、組織として継続的に運用できる体制を整備することが重要だと考えています。
問われるのは「作ったか」ではなく「機能しているか」
内部統制において重要なのは、文書や手続を 「作ったか」 だけではありません。
実際に現場で 「機能しているか」 が問われます。
特に上場会社や上場準備会社においては、事業の成長、組織変更、システム変更、人員異動などにより、従来の統制が実態に合わなくなることがあります。
そのため、内部統制は一度整備して終わりではなく、定期的に見直し、現場の実態に合わせて改善していく必要があります。
実効性のあるガバナンス体制の構築へ
今回の調査結果は、内部統制の不備が特定の企業だけの問題ではなく、多くの企業に共通する実務上の課題であることを示していると考えます。
今後は、文書整備にとどまらず、以下のような観点を含めた総合的なガバナンス体制の構築が重要になるのではないでしょうか。
・現場で運用できる内部統制
・不備を早期に把握するモニタリング
・改善につながる内部監査
・各部門間の連携
・継続的に統制が見直される仕組み
川端ガバナンスアドバイザリー株式会社では、内部統制・IT統制・内部監査を中心に、形式的な制度対応にとどまらない、実務に即したガバナンス体制の構築を支援してまいります。
出典:東京商工リサーチ TSRデータインサイト
「2025年度上場企業『内部統制の不備』は41社・42件 関連部門の人材不足が課題の企業も目立つ」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202847_1527.html
